記憶
君は重たそうな荷物を持って、寂しそうにうつむいていた。
○
いつでも自由気ままで、冷たい人だ。
それも含めての君だから、構わないのだけど。
○
僕が思い描く僕の物語は、ほとんど君が作り上げてしまった。
○
いろんなものを諦めて、いま君がここにきたという、大きな説得力。
○
好きと伝えたのだから、僕の気持ちはわかっているのだと思うんだけど、そういう気持ちもわかったうえで、君はなにも言わないんだね。
○
君が急に立ち止まって、振り向いた時、悲しいはずなのに、僕はまた君に見惚れるばかりだ。
○
なにをしてもなにを見ても、君のことを思い出してしまうんだから、困ったものだ。
○
そんなことで離れてしまうんだね。
それなら最初から、優しくしないで。
○
重たそうな荷物を置いた君は、どんな表情をしていたのか、
いつか見ることができるでしょうか。
○
もう忘れました。
君に出会う前の僕を。
○
君が思い描く君の物語に、
笑っていようが、怒っていようが、泣いていようが、なんでもいいから、僕がいますように
*
そう願うことすら、いまの僕には許されない。
ありがとうと伝えることさえ、できない。