無辺世界

日記のようなもの

記憶

君は重たそうな荷物を持って、寂しそうにうつむいていた。


いつでも自由気ままで、冷たい人だ。
それも含めての君だから、構わないのだけど。


僕が思い描く僕の物語は、ほとんど君が作り上げてしまった。


いろんなものを諦めて、いま君がここにきたという、大きな説得力。


好きと伝えたのだから、僕の気持ちはわかっているのだと思うんだけど、そういう気持ちもわかったうえで、君はなにも言わないんだね。


君が急に立ち止まって、振り向いた時、悲しいはずなのに、僕はまた君に見惚れるばかりだ。


なにをしてもなにを見ても、君のことを思い出してしまうんだから、困ったものだ。


そんなことで離れてしまうんだね。
それなら最初から、優しくしないで。


重たそうな荷物を置いた君は、どんな表情をしていたのか、
いつか見ることができるでしょうか。


もう忘れました。
君に出会う前の僕を。


君が思い描く君の物語に、
笑っていようが、怒っていようが、泣いていようが、なんでもいいから、僕がいますように


そう願うことすら、いまの僕には許されない。
ありがとうと伝えることさえ、できない。